K2遭難事故 史上最悪の惨事に
ラシュ・ピーク登頂をされたお客さんがイスラマバードに戻られるのでお迎えしようとしていたスタッフの元に、K2(8,611m) 史上最悪の遭難事故の知らせが入ってきました。それ以降、情報収集に追われる事態に・・・。こちら日本連絡事務所にも情報とともに、発見されシュラフに包まれた遺体の現場写真などが入ってきて、今更ながらショックを受けています。

今回、弊社のお客さんではなかったのですが、夫ベーグやスタッフたちの知人でもあるフランス人クライマーも犠牲になりました。
ベーグの故郷からは、アッパーフンザ最奥、シムシャール村の若く有望な青年2人が亡くなりました。ひとりの青年は、父方の遠い親戚でした。ハイ・ポーター(高所ポーター)として登っていたのです。もうひとりはレスキュー隊として二次災害での死でした。”山が好き”、”責任感”など、登った理由はひとつではないでしょうが、いずれも生活のための今回のK2登山だったといえます。
われわれは外国からの知り合いと、現地サイドの両方で、3人もの友、親戚を亡くすことになってしまいました。

11人死亡。遭難の様子から遺体が発見されない方も出てくることでしょう。
11人の内訳は、韓国人、ネパール人、フランス人、アイルランド人、セルビア人、ノルウェー人、パキスタン人。他負傷者にオランダ人、イタリア人
これだけ多くの外国人登山家を巻き込んだ今回の遭難。われわれも哀しみに暮れ、また浮かび上がるいくつもの問題点にマユをひそめてもいます。自然の問題、そして自然のせいばかりにはできないいくつもの問題点。

8,211m地点のボトル・ネックと呼ばれる付近で、ロープが切れたのが先か、氷塊の崩落~雪崩が先か・・・・・・。直撃を免れた人々もパニックに陥り、戻るべき道が分からなくなっていた、と聞こえてきています。ただのパニックではないでしょう。極めて酸素が薄く、ただでさえ、人間が普通の状態ではいられない場所です。

お金を投じれば登頂するのが比較的容易(という言い方が妥当かわかりませんが)になっているネパールエベレスト登山と違い、難易度は数倍高い、といわれるこのK2登山。それにしても、いくつもの不運が重なって起きました。

ベーグが隣りでつぶやいています。
「皮肉な話だねぇ。危険だ危険だと、やや偏った報道もされているパキスタン報道により、日本からの登山家が減っているここ数年だけれど、他国の登山家たちはこんなにたくさん登りに来ていることが日本の方にも今回、こんなカタチでわかったねぇ・・・」。

そしてまた2001年にアッパー・フンザのシムシャール村へ日本人のグループをお連れした時のことを思い出します。
その日は、アッパー・フンザ、ゴジャール地区の村対抗ポロのトーナメント優勝決定戦の日でした。私たち夫婦は、日本人ゲストたちと共に来賓として呼ばれ、ベーグは閉会式で壇上に上がり挨拶をしました。その時、話はスポーツにとどまらなく、シムシャールの現状、未来などに触れていたのですが、その中でベーグは村の若者たちに、「安易に・・・とまでは言わないが、みながみな揃って山を職業に選ぶのはやめるべきだ」という話をしていたのでした。
標高3100m地帯にあり、アッパーフンザの中でも最奥にあるシムシャール村。人々は、アッパーフンザの中でも最も屈強な体力を持っています。彼らの夏村はパミールにあり、そこに至っては5,000m地帯。ここで夏の間、赤ちゃんが誕生することも少なくないのですよ。生まれおちた瞬間から、乾いた大地、薄い酸素の中で生きていかなければならないシムシャール人、抜群の心肺機能を持っています。こうした環境下、8000m峰をすべて登っている登山家を輩出したり、またハイポーターを一番多く輩出してのもこの村なのでした(女性登山家も輩出しています)。
パキスタン北部には多くの民族がいる中で、今回、ふたりもの若者を失ったシムシャール。陸の孤島のように渓谷の奥に広がった村が今、哀しみに包まれているのが皮膚感覚で伝わってくるようです。麦が黄金色に実り始めているだろうあの美しい風景が哀しみに暮れているにちがいありません。

亡くなった方々に心より哀悼の意を表します。
by silkroad_caravan | 2008-08-06 12:42 | パキスタン北部あれこれ
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フンザへ嫁ぎ、パキスタン政府公認現地旅行会社&取材業に励む日本人女子が綴る仕事最前線やスローライフ。アフガニスタン取材も得意。Silkrad Caravan Tour, TV Media coverage
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