フンザと、イランのおふくろの味 + 長寿の話も
 ここのところ、硬い内容が続きましたから、今日はちょっと、おいしいブログにしたいと思います。食べ物ネタは、書きたいことがいっぱいあります。特に私は、”日本”と”パキスタン”と”フンザ”という、異なる食文化の狭間で小さな子どもたちを育てているため、頭の中は、食に関する疑問や悩みでいっぱいなのです。(*読者のみなさんは、パキスタンとフンザを分けてあることを不思議に思われるでしょうか。フンザは元々ひとつの王国で、地理的にも歴史的にも、パキスタンとは異なる食文化を持っています)。

 いうまでもなく日本とフンザの食生活も、大きく異なります。気候風土もまったく違います。ですから違う食生活をしているのは当然のことですが、ともに長寿で有名なところでもあるのですよね。
 よくいわれるフンザの長寿伝説、実際のところは、伝説になるほどでもないようです。それでも旅人から見ると、顔に深い深いシワを刻んでなお、超現実と思われるほど美しい村の中を、かくしゃくと、ある人はクワを持ち、ある人はワラを山のように背中に積んで、しなやかにゆくその姿を見ると、長寿伝説のひとつも語りたくなるでしょう。
 実際のところ、病気らしい病気がなく(ないんです!)、寝たきりのお年寄りが皆無、元気に年をとっていくのは事実で、世界中の長寿研究者の方々が注目されるのも分かります。(おカミの舅と姑も、きっと、おカミより長生きするに違いない、彼らの生活を見ているとそう感じます)。
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 さて、最近、そんなフンザの”おふくろの味”に、なんと、日本の友人夫婦宅で再会し感激してしまいました。友人は、夫ベーグと私の、いわゆるパパ友とママ友・・・子育て中の同志です。ママは日本人で、パパはイラン系カナダ人。パパのSさんは、時々、私たちにイラン料理の腕をふるまってくれるのですが、その料理上手なこと! センスのよろしいこと! そして、おいしーい。世界地図を思い浮かべていただければ両国は土地続きのお隣どうしですから、ご納得いただけるでしょう。彼の作るものにはパキスタンやフンザを思い出させてくれるような品が多いのですね。 

 最近、イランに里帰りされ、いろいろな食品を持って帰って来られたSさんが、最初につくってくれた一品が上の写真。ナスとニンニクをじっくりオリーブオイルでソテーしたものをつぶし、その上にクルミや、ソテーしたミント、カシュクといわれるドライヨーグルトがかかったものです。そしてこのカシュクが、フンザのおフクロの味、クルットといわれるチーズと同じ味だったのです。
 「すっぱーいこの味、なつかしい、涙~、しかし待てよ、ドライヨーグルト? チーズじゃないの?」という会話がこの後、続きます。ミルクを長い長い時間かけて攪拌した後、上澄みでバターを作るのですが、その下に残ったラッシー(ヨーグルト)をさらに加工し、それぞれ、カシュクとクルットになります。ただ、その加工の仕方が違うのでした。フンザのクルットチーズはこの後10時間以上も火にかけた後、天日干しします。イランのカシュク、ドライヨーグルトはそのまま袋に入れて発酵させるようです。
 
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 こちらがフンザのクルットで作ったチーズうどんです。クルット・モチといいます。おふくろの味です。最初に食べたときは、その酸っぱさに驚き、やがて病みつきになってしまうんだなぁ。特にフンザの厳冬期に食べると、最高! 私はいつも義弟たちに、「姉さんって、本当にモチが好きだよねー」と笑われています。今、ベーグは傍らで、「これにグリ(種も丸ごと乾燥させたアンズ)を入れると、もっとおいしいぞ~」と、うっとり思い出しています。

 長寿の話に戻れば、ベーグのひいお爺さんは108歳まで元気に生きて、ある日、「ワシは明日死ぬだろう」と、家族全員に伝え、その通り、ぽっくり亡くなるという大往生だったそうです。そのお爺さんは毎朝、欠かさず、このクルット・モチを食べていた、と聞いています。ひいお爺さんが生きている間に、チャイ(ミルクで煮出した紅茶)や砂糖を摂取する習慣がパキスタンから入ってきましたが、ひいお爺さんは決して、そういったものを口にしようとはしなかったといいます。絶対に体に悪い、と思っていたようです。クルット・モチはやっぱり、長寿の秘訣のひとつだったのでしょう。

*前回の記事に書きましたが、このクルットチーズが、WWFの強引なプランにより作れなくなってしまいそうな2007年です。
*クルット(チーズ)のことは、以前、共同通信社さんの『暮らしの知恵』という雑誌に寄稿しました。今度、PDFファイルにして、この記事とリンクしたいと思います。

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by silkroad_caravan | 2007-07-04 04:31 | フンザ
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